乗り物といえば、僕には思い出がある。
フランコさんは、バイクが好きだ。
少しでも操作を誤れば、すぐに転ぶ。
「自分が、バイクをコントロールしている」
という実感が、たまらなく好きなのだそうだ。
僕はといえば、バイクはただうるさいだけ。
ガレージにいると突然、「ドドーンドンドンドン」。
僕は、土日はガレージ近づかなかった。
ある朝、フランコさんはいつも通り、僕の頭を撫でて部屋を出て行った。
もちろん、僕もいつも通り、ガレージへはついて行かなかった。
ところが、フランコさんは、その日も、また次の日も帰ってこなかった。ずーっと、帰ってこなかった。「捨てられたんだ」たまらなく悲しくて、ミキと泣いた。
フランコさんが出て行ってから、3週間がたったある日、エンジン音が聞こえた気がして、テラスへ出てみた。ガレージの前にフランコさんがいた。
僕はそれ以来、バイクのシートを陣取っている。
いつ帰ってくるのか、彼に確認する為に。
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