フランコさんは、高校まで、3人の弟たちと共に親元で過ごした。
家から70Kmも離れた工業高校の電気機械科。
デザインには、まったく縁はない。お小遣いはすべて、自動車雑誌に消えた。
絵は、独学で続けた。
南イタリアには、学校はおろか、仕事がない。
働かないのではなく、働くところがないのだ。
産業は、北イタリアに集中している。
スカレアは、その北の人々が夏のバカンスを過ごす別荘地。
そこで生活をしているフランコさんたちには、バカンスはない。
彼が電気機械科を選択したのも、堅実な将来を見据えたためだ、
と周囲は思っていた。
しかしフランコさんは、諦めてはいなかった。
「カーデザイナーになりたい」。
絵を描いていれば「夢で飯が食えるか!地道に働くことを考えろ!」と先生たちに目の敵にされた。味方は、右手に握られている鉛筆1本だけ。
ある日突然、フランコさんは人生の大きな転換期を迎えた。
高校4年を留年した。
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